できたばっかりの研究室なので、実際の研究、教育活動はこれからですが、おおよそ以下のようなことを考えています。
入門編として、TeX、PHITS、ワークステーションの使い方等を紹介します。また、原子核物理の応用的側面について勉強します。これらを通して、原子力の中で原子核の様々な性質がどのように使われているか、何が問題になっているか等を学んで行きます。
上の勉強がある程度進んだら、コードをいじりながら、実際の計算をするのに必要な計算機のテクニックや数値計算法等を学びます。量子力学や原子核の世界って、なかなか実感がわかないんですが、このあたりまで来るとだいぶ分かってきます。動画も作れるようになります。
一方、実験をやりたい人は原子力機構への短期出張等で経験を積みながら検出器の基礎的知識を習得します。日本中でもここしか出来ない実験に参加することができます。
その後、テーマに応じておおよそ3つのグループに分かれます。
研究室には使えば成果を出すことのできる計算コードがたくさんそろっていますから、計算系の人はまずはそれらを使いこなすことを優先します。難しいことは後で勉強すればいいでしょう。
核分裂は原子力の基礎中の基礎ですが、その本質は、有限核子から成る原子核の大規模集団運動です。これまでにも多くの研究がされてきましたが、未だに未解明の部分が多々あります。そこで我々は理学的原理原則と工学的立場のバランスをうまく取りつつ、多次元ランジュバン方程式の方法によって核分裂性核種の反応機構(核分裂片の質量数分布、エネルギー分布、放出中性子数)などの記述を目指し、原子力における最重要反応種の定量的理解を進めます。
原子炉や核融合炉、加速器駆動による核変換システムや(重)粒子線を用いるガン治療において起きる核反応の中でも軽い原子核の関与する反応や高エ ネルギーでの反応、中間質量のクラスターを生成する反応は複雑で反応機構は良く理解されていません。そこでシミュレーションによりそれを記述し、革新的原子力システム構築に必要な基礎情報を固めます。
福島第一原子力発電所の事故原因となったのは核分裂生成物の崩壊熱、すなわちβ崩壊です。また、核分裂生成物からのβ遅延中性子(遅発中性子)は原子炉制御にとって重要です。我々は中性子過剰核の起こすβ崩壊を大局的に記述し、 β線発熱、γ線発熱と遅発中性子放出の様相解明を目指します。
原子力機構で開発、維持されている放射線輸送シミュレーションPHITSコードシステムに組み込まれている物理モデルの改良や計算手法の高度化、 様々な場面における適用研究を行います。
原子力機構東海のタンデム加速器やJ-PARCを用いる高度な原子核実験を共同で行います。特に我々が開発した重イオンを用いる多核子移行反応(代理 反応)は多くの不安定原子核の反応特性を同時に決定するために有効な手法であり、そのための装置開発や理論的考察を含みます。
宇宙における元素の起源の解明を行います。特に中性子捕獲元素合成は鉄より重い元素のほぼ全て、ウランやトリウムの全量を生成する機構であり、原子力分野で用いるデータの検証ともなるため、原子核工学の知識を動員してこの分野への貢献を行います。
この他、原子核の応用に関連する重要で面白い話題があれば適宜行っていきます。学生からの提案も歓迎します。