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所長 教授 工学博士 矢野豊彦
Director Toyohiko YANO,  Dr. Eng.
 

 

 平成25年4月より原子炉工学研究所長を拝命することになりました。原子炉工学研究所は、「原子炉工学に関する学理及びその応用の研究」を設置目的として昭和31年4月に研究施設として産声を上げ、昭和39年4月に附置研究所に昇格し、平成16年4月の大学法人化以降は大学の付属研究所として今日を迎えております。規模が小さいにもかかわらず、設立時から原子力と放射線応用の分野において多くの優れた研究成果を上げて来ました。そして今なお、原子力分野において重要な役割を担っております。

 国立大学法人となった際に、研究所として中期目標・計画を策定し、現在はその第二期に入っております。現在の中期計画では、ミッション主導型研究として「革新的原子力システム研究」「アクチノイド・マネージメント研究」「グローバル原子力セキュリティ研究」および「高度放射線医療研究」を推進すると共に、それらの基礎基盤となる研究を推進しております。基礎基盤研究から、次期中期計画に向けての新しい研究が台頭してくることを期待しております。

 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と、福島第一原子力発電所の炉心溶融に至った過酷事故は、甚大な被害を及ぼし、今もって多数の国民が避難生活を余儀なくされています。マグニチュード9.0という史上まれに見る大規模な地震とそれに伴う巨大津波により、2万人近くの尊い命が失われ、また多くの家屋が倒壊しました。被災された方々やその関係者には、心よりお見舞い申し上げます。巨大地震およびそれに伴う巨大津波という自然の猛威には、容易にはなすすべを見つけられませんが、地殻変動の特に激しい、それゆえに山河、海浜、温泉などの自然の美しい日本に住む国民として、大自然の災禍は必然的に背負わなければならないリスクであります。しかしながら“想定を超える”津波による原子力発電所の炉心溶融事故は、防ぐことは出来なかったのでしょうか?“想定される事象”に対応する安全対策は優先して行われていたはずであり、それは地震により原子炉が正常に停止したことからも分かりますが、“最悪の状況”を意識的あるいは無意識的に除外していたように思います。原子力研究を使命とする研究所に身を置く研究者として悔しい思いとともに、本当に申し訳なく思います。原子炉工学研究所は所員が一丸となり、原子力災害の終息と一日も早い復旧に向けた課題に取り組んでいく所存です。

 原子炉工学研究所と大学院理工学研究科原子核工学専攻は表裏一体の運営をしております。原子核工学専攻では平成15〜19年度に「世界の持続的発展を支える革新的原子力システム」をテーマとした21世紀COEプログラムに原子力関連では全国で唯一採択され成功裏に終了しました。その後も、平成20〜22年度には大学院教育改革支援プログラム(大学院GP)において「個性を磨く原子力大学院教育システム」が採択され、主として修士課程の教育改革が実施されました。さらに、平成23年度からは博士課程教育リーディングプログラムにより「グローバル原子力安全・セキュリティ・エージェント養成」がオンリーワン型として原子核工学専攻単独の運営により7年計画でスタートし、原子力の安全を基幹として博士課程に新しい教育課程が設置されました。このように、一貫して最高レベルの原子核工学教育を実施する体制が確立されております。これらの取り組みを通してこれからの原子力を背負っていく若者の育成に専攻を挙げて取り組んでいく所存です。

 原子炉工学研究所は、エネルギー問題と地球規模の環境問題の解決を目指す原子力の基盤研究をプロジェクトの柱として実施し、放射線応用を含めた原子力分野のフロンティアを開拓できる拠点研究機関として、米国、欧州、旧ソ連諸国との連携のみならず、インドネシア、ベトナム、タイ等の東南アジア諸国とも連携し、原子力・放射線応用のグローバルな連携拠点としての研究機関を目指す所存です。

 21世紀中葉には、開発途上国における人口の急激な増加と、それら地域の生活水準の向上が重なり合って世界のエネルギー消費を急激に増加させ、エネルギー問題、食糧/水問題と共に大きな地球環境問題を引き起こすことが危惧されております。そのなかでも特に化石燃料の大量消費に伴う大気中の二酸化炭素濃度の上昇は、地球温暖化や異常気象を引き起こす要因であることが知られています。必要なエネルギーを確保しつつ温暖化ガスの排出を削減することは将来にわたり人類が地球に生き続けるための大きな課題であり、原子力への大きな期待が寄せられていました。しかしながら、福島第一原発の事故では、原子力のもっとも危険な面をさらけ出してしまいました。科学者としての原点に立ち戻り、原子核に閉じ込められていたエネルギーを解放するという行為に内在する危険性を謙虚に再認識し、より安全性の高い原子力システムを再構築しなければならないと思います。まずは、専門家として一日も早い復興への課題に取り組むことが責務であり、さらに過酷事故の経験から多くを学び、原子力への信頼を取り戻すべく、研究・教育活動を続けていきたいと思います。歴史的に見れば、日本は過去に開国や関東大震災、第二次大戦等と何度も国の存亡に係わる危機に直面し、それを乗り越えることにより発展してきました。その度により強い、より良い国になってきたと思います。今回の震災も必ずや乗り越えなくてはなりません。良心をもった科学者として公正に判断し、国民に伝えていくことが重要であると思います。

 学内外の皆様からアドバイスを戴きながら、所員の協力を得て、社会が期待する、そして所員や学生が研究や勉学に遣り甲斐のもてる研究所になるように努めていきたいと思います。今後ともご支援のほど、よろしくお願いします。